
働くことに不安があるあなたへ
「働くこと」に対して、不安や心配を感じていませんか?
初めての就職や、しばらくのブランクからの復帰は、誰にとっても戸惑いがあるものです。
まして、心や体に不調があったり、自分に合う職場がわからなかったりすると、
「ちゃんと働けるのかな…」と不安になるのは、ごく自然なことです。
そんなとき、あなたをそっと支えてくれる制度があります。
それが 「就労移行支援」 です。
この記事では、就労移行支援とはどんな制度なのか、
どんな人が利用できて、どんなサポートが受けられるのかを、図解を交えてやさしく解説していきます。
就労移行支援ってなに?
就労移行支援とは、障害や病気などの理由で、
すぐに一般企業で働くことが難しい方に向けて、就職に向けた準備を支援してくれる福祉サービスです。
専門のスタッフがいる「就労移行支援事業所」(支援施設)に通いながら、
働くためのスキルを学んだり、生活リズムを整えたり、就職活動のサポートを受けたりすることができます。
一言でいうと、「就職を目指すための学校」のような場所です。
通所は週に数回から始められ、無理のないペースで一歩ずつ前に進むことができます。
誰が利用できるの?

就労移行支援を利用できるのは、18歳以上65歳未満で、
障害や病気などにより、すぐに就職するのが難しいとされる方です。
具体的には、次のような方が対象になります:
- 発達障害・知的障害・精神障害・身体障害がある方
- うつ病・不安障害・双極性障害など、メンタル不調を抱えている方
- 難病など、長期治療が必要な病気を持っている方
「障害者手帳を持っていないと使えないのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、
医師の診断書や自治体の判断で利用が認められる場合もあります。
何よりも大切なのは、「いつかは働きたい」という気持ちです。
どんな支援が受けられるの?
就労移行支援では、以下のような多様なサポートを受けられます。
● ビジネススキルの講座
パソコンの基本操作、ビジネスマナー、電話応対、報連相の練習など、
働くうえで必要なスキルを基礎から学べます。
● 生活リズムの改善
平日の日中に通所することで、朝起きて外出する習慣を取り戻し、生活リズムを整えられます。
● 就職活動の支援
履歴書・職務経歴書の作成、面接練習、求人の探し方や応募の仕方などを、スタッフと一緒に進められます。
● 職場実習(インターン)
希望や適性に合わせて、実際の企業での体験実習を受けられることもあります。
● メンタル面のサポート
定期的な面談で、不安や悩みを相談できます。必要に応じて医療機関や関係機関とも連携します。
これらの支援を通じて、少しずつ自信をつけながら、就職への準備を進めていけます。
そして、就職がゴールではなく「スタート」と考え、就職後のフォローも行われます。
利用までのステップ(図解あり)
実際に就労移行支援を利用するには、次のようなステップを踏んで進んでいきます。
図解でも紹介している通り、全体の流れは6ステップです。



STEP 1|相談・問い合わせ
気になる事業所に連絡をして、まずは話を聞いてみるところから始めます。
ホームページやSNS、ハローワーク、市役所の福祉課などで探すことができます。
STEP 2|見学・体験利用
実際に事業所を訪れ、プログラムの内容や雰囲気を見てみましょう。
1日体験参加ができるところも多く、自分に合うか確かめられます。
STEP 3|受給者証の申請
利用したい事業所が決まったら、自治体の障害福祉課に「受給者証」の申請を行います。
スタッフが手続きのサポートをしてくれます。
STEP 4|利用開始・支援計画の作成
受給者証が交付されたら利用スタート。
目標や通所頻度に応じて、個別の支援計画を一緒に作っていきます。
STEP 5|就職に向けた準備
自分に必要なスキルや経験を積みながら、無理なく「働く力」を育てていきます。
STEP 6|就職後の定着支援
就職後も電話や面談でスタッフのフォローを受けられます。
職場での不安や困りごとがあっても、安心して相談できます。
どんな人が利用しているの?

実際に就労移行支援を利用している方には、次のようなケースがあります。
- うつ病で退職した方:体調を整えながら再スタートを目指し、少しずつ自信を取り戻して再就職へ。
- 発達障害のある方:自分の特性を理解しながら、ミスを減らす工夫や得意を活かす方法を学び、働く場を見つける。
- 新卒で自信がなかった方:対人関係に不安があり、社会に出る前の準備として就労移行を利用し、ステップアップ。
共通しているのは、「働きたいけれど、不安がある」という気持ち。
その思いに寄り添い、安心して次の一歩を踏み出せるようサポートするのが、就労移行支援の役割です。
利用期間と費用について

就労移行支援の利用期間は原則 最大2年間 です。
じっくり準備を進めても2年あれば多くの方が就職を目指せます。
また、就職が早く決まった場合は途中で終了することも可能です。
※一部、就職に向けての見通しが立つ場合には最大1年の延長が認められることもあります。
費用については、利用者の自己負担は 原則1割。
さらに所得に応じた月額上限が設定されているため、多くの方が「無料〜数千円程度」で利用しています。
生活保護世帯や低所得世帯は0円で利用できる場合も多く、金銭的負担はかなり抑えられます。
就職後のフォローも安心
就職が決まったあとも、安心して働き続けられるように 「定着支援」が受けられます。
- 就職後6ヶ月間:事業所スタッフが定期的に連絡・面談し、職場での不安や困りごとを相談できます。
- 状況に応じて:さらに最大3年間の長期フォロー(福祉サービスとしての「就労定着支援」)を受けられる制度もあります。
このように、「就職して終わり」ではなく、「その先も見守る」サポート体制が整っています。
他の制度との違いは?
就労移行支援以外にも、就労に関する支援制度があります。代表的なのが次の3つです。
● 就労継続支援(A型・B型)
福祉的なサポートのある職場で働き続ける制度です。
一般企業への就職が難しい場合に、A型(雇用契約あり)やB型(雇用契約なし)として働ける場を提供します。
→ 「企業に就職を目指す」のが就労移行支援、
「今の状態で働き続ける」のがA型・B型 という違いがあります。
● ハローワーク
国が運営する職業紹介の窓口。
求人情報や面接相談、就職セミナーなどがありますが、
日々の訓練やサポートは就労移行支援のようには受けられません。
→ ハローワークは就職先を探す場、就労移行支援は就職に向けて準備をする場と使い分けるのがおすすめです。
まずは“話を聞いてみる”だけでもOK

「使ってみたいけど、ちょっと不安…」という気持ち、よくわかります。
でも、大丈夫。まずは話を聞くだけでもOKです。
気になる事業所に見学・体験利用の予約をしたり、自治体の福祉課やハローワークで制度の説明を聞いてみたり。
いきなり決める必要はありません。
“知ること”から始めて、少しずつ不安をほぐしていけたら十分なんです。
まとめ
就労移行支援は、「働きたいけど不安がある」あなたを支えてくれる制度です。
利用できる人の条件や支援内容、ステップや費用まで知ることで、少しイメージが湧いてきたのではないでしょうか?
あなたの「働きたい」という思いを、どうかあきらめないでください。
焦らず、自分のペースで。
まずは一歩踏み出すところから、明るい未来への準備を始めていきましょう。