
精神的にしんどい期間が長く続くなかで、精神保健福祉手帳の申請や利用について考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、ネット上には「精神保健福祉手帳は3級は意味ない」などの情報もあり、申請する必要がないかもしれないと考えている方もいるかもしれませんね。
実は精神保健手帳3級を取得して得られるメリットはたくさんあります。
- 障害者雇用求人への応募可能
- 公共料金等の割引
- 税金の減免
- 公営住宅申し込み優先
精神保健福祉手帳を申請/利用するメリットについて正しく知ることで精神保健福祉手帳3級が意味がないものなのかどうか、今回の記事を通じて考えていきましょう。
どうして精神保健福祉手帳3級は意味ないと言われるの?
精神保健福祉手帳は、精神的な障害を持つ人々が社会生活を送る上での支援を受けるための手帳です。
この手帳は、1級から3級までの3つの等級があり、それぞれの等級に応じた支援が受けられる仕組みとなっています。
しかし、特に3級の手帳については「意味がない」との声も聞かれます。

その背景には、以下のような理由が考えられます。
支援内容が限定されている
3級の手帳では、1級や2級と比べて受けられる支援の内容や範囲が限定的です。
これが「意味がない」と感じる大きな要因となっています。
認知度が低い
一般的に、精神保健福祉手帳の存在自体があまり知られていないため、3級の手帳を持っていても、その利点やメリットを十分に享受するのが難しい場合があります。
取得の手続きが煩雑
手帳を取得するための手続きや更新の際の手間が、3級の手帳のメリットと比較して大きいと感じる人もいます。
社会的な偏見
精神的な障害に対する理解がまだ十分でない中、手帳を持つことで偏見を受けることを恐れる人もいます。
このような背景から、3級の手帳を持つメリットを感じにくいという意見が出てくることもあるでしょう。
自分の障害を意識してしまう
手帳を持つことで、日常生活の中で自分の障害を常に意識するようになり、ストレスや不安を感じる原因となる人もいます。
また新しいことに挑戦することや、自分の可能性を広げることを避けるようになる可能性があります。
以上のような理由から、一部の人々は精神保健福祉手帳3級に「意味がない」との評価を下していることが考えられます。
しかし、それぞれの人の状況やニーズに応じて、3級の手帳が役立つ場面も確かに存在します。手帳の取得を検討する際は、自身の状況をよく理解し、適切なサポートを求めることが大切です。
精神保健福祉手帳とは?


精神保健福祉手帳は、精神疾患による障害が一定期間以上継続した状態にある方が、日常生活に支障が出ている場合に交付される手帳です。
手帳を持つことで、日常生活での支援や様々な優遇措置を受けることができます。
精神保健福祉手帳(精神障害者手帳)は身体障害者手帳から始まり、その後に療育手帳、そして1995年に精神障害者保健福祉手帳が交付されるようになりました。
例えば、通院に必要な交通費の補助、生活支援員による自宅訪問、就労支援、就学支援、住宅改修費の助成など、多岐に渡ります。
また、精神保健福祉手帳は医療機関での診察や手続き、公共施設の利用などで、身分証明書として利用することができます。
精神保健福祉手帳の交付には、精神保健指定医(又は精神障害の診断又は治療に従事する医師)による診断書が必要です。継続して支障がある場合には、手帳の更新も可能です。



精神保健福祉手帳は、優遇措置を受けられる貴重な手帳です。
精神保健福祉手帳3級を取得できる要件
精神保健福祉手帳3級に該当するのは、以下の要件とされています。
精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
精神障害者福祉手帳3級の人がどのような人かレベルをわかりやすく説明すると、以下のような状態となります。
・働くことや単独での外出、家事等はできる
・対人コミュニケーションはある程度取れるが、不安定になることもある
・過度なストレスがかかることで対処が難しくなることがある
2級ほど日常生活に困難を生じるわけではないですが、本人にとって強いストレス状況に遭遇すると、対処が上手くいかなくなる状態といわれています。ただし、悩みや困りごとのレベルが軽いという意味ではありません。
2級は通院や服薬を必要とする人だけが対象ですが、3級の場合は通院や服薬は必須ではないといわれていますが、自己判断せずに医師の指示に従いましょう。
ちなみに、精神保健福祉手帳1級と2級に該当するのは以下の要件です。
- 1級: 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級: 精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
精神保健福祉手帳の1級に該当する状態は日常生活を営むことに困難が生じている状態で、様々な支援を受けながら日常生活を維持していくことが望ましい状態。
また、精神保健福祉手帳2級に該当する状態は支援を受けることで、何とか日常生活を営むことができる状態。
つまり、精神保健福祉手帳の3級に該当する場合は、多少の支援は必要になるが支援を受けることで自立した社会生活を送ることや就労ができるという状態ということになります。
精神障害者手帳3級が2級になる条件は?


受けられるサービスの違いから2級取得を希望する人もいれば、できるだけ3級をキープしていたいと考える人もいます。
日常生活に支障がある場合は、2級となることもあるかもしれません。
3級は基本的には一人でさまざまな行動ができるけど、過度なストレス状況で支障をきたす可能性がある人が対象ですが、2級は過度ではなくても通常のストレスで日常生活に支障があるといわれています。
また、2級は慣れた場所なら一人で行けるけれどそのほかは誰かの助けが必要な状態や、通院・服薬が必須の状態となります。
デイケアや通院、就労移行支援事業所以外の場所に行く際にストレスがかかりやすい人は、その旨をきちんと医師に伝えることで2級となる場合もあるでしょう。
2級の人が就職できないわけではありませんが、より応募できる就職先を増やしたい人は3級を目指すのも選択肢の1つです。
障害者手帳取得のメリット


障害者手帳を取得することで受けられるメリットについてみていきましょう。
生活に関わるサービスが受けられる
精神保健福祉手帳を申請することで活用できる日常生活に関わるサービスは以下のような内容になります。
また、生活が困窮している場合には生活福祉資金の貸付の支援を受けることもできます。
精神保健福祉手帳の有無には関わりませんが、自立支援医療による精神科や心療内科にかかる医療費負担の助成や障害福祉サービスに関わる支援を受けることもできます。
余暇に関わる割引等も受けられる
生活や心身に余裕がないと家にこもりがちの人も多いですが「病気だから余暇を楽しんではいけない」ということはありません。精神保健福祉手帳を申請することで、たとえば映画館で一律1000円で映画を鑑賞できます。


そのほか、美術館や博物館、水族館、東京ドームシティアトラクションズや東京ドーム天然温泉「スーパーラクーア」、ラウンドワンなども割引や無料入場が可能です。
「精神保健福祉手帳 割引」と検索すると全国各地の割引対象施設を調べられるサイトもあるので、セルフケアのためにも余暇も楽しんでくださいね。
交通運賃に関する割引がある


自治体や各会社によって、割引率が異なったり、障害種別に制限がある場合もあるので、利用前に確認をされると良いでしょう。
JR各社、東京メトロ、東武、西武等(鉄道)
京王バス、小田急バス、関東バス、高速バス等(バス)
タクシー
高速道路・一部の有料道路
飛行機
フェリー
障害福祉サービスを受けられる
障害福祉サービスは、障害により生じる生活の困りごとに関して、さまざまな支援を受けられる福祉制度です。手帳を持っていなくても審査を通過すれば受けられますが、手帳所有者は確実にサービスの対象となります。
この障害福祉サービスは大きく分けて、介護給付と訓練等給付に分けられます。
ただし、全員が同じサービスを受けられるわけではなく、障害の程度や各自治体によってサービスは異なります。
どのサービスを受けるかの最終決定は自分でできるので、生活のためにも活用してみてくださいね。
障害者雇用の求人に応募できる


精神障害を持つ方のなかには、障害者雇用枠は応募できないと認識している人もいますが、精神障害者手帳3級の方でも障害者雇用の求人に応募可能です。
精神疾患により体調等が安定せず、通院の必要があったり、環境に配慮が必要な場合もあります。
一般枠では継続した就労が難しい場合は、障害者雇用で就職することも検討すると良いでしょう。
障害者雇用と聞くと、収入面や選べる業種の幅が狭くなるとイメージする人も多いですが、そのようなことはありません。また、障害者雇用といっても身体障害者のみ対象の企業も一部ありますが、すべての企業がそうではないです。
たとえば、ダスキンの障害者雇用枠で最も多いのは精神障害者と公表されています。
業種は主に、部品加工やCAD作成などある程度のスキルも必要とされたり、今後ほかの企業にいく際にも活用できる業務ばかりです。企業内に精神保健福祉士も配置されているようで、相談しやすい環境を整えています。
ほかにも「ゼネラルパートナーズ」は、精神障害を持つ方が安定して働ける農業事業所の運営を行なっています。
例では大手のダスキンやゼネラルパートナーズを紹介しましたが、中小企業でも近年障害者雇用を積極的に行う所は増えていますし、エージェント利用なら有名企業の就職も挑戦しやすくなりますよ。
障害者雇用枠でのメリットやデメリットは別の記事でも書いていますので参考になさってくださいね。


障害者雇用枠の求人を探す場合には転職エージェントの利用をオススメします。
エージェントはあなたの条件に合った求人を紹介してくれるだけでなく、応募書類の添削や面接対策などのサービスが充実しています。
障害者雇用率や社員の定着率の高い企業の情報も最新のものを知ることができます。特に社員の定着率を自分で調べるのは難しいといわれていますが、エージェントなら離職率も聞けるのでぜひ活用してみてください。
エージェントの利用はどこも無料ですので、複数のエージェントに登録して希望の求人を探すのが就労への近道ですよ。
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就労の準備を始めたい時は?
体調がまだ十分に安定していなかったり、障害に対する自己理解を深め、ストレスコーピングについて学びたい場合、また安定した就労のためにスキルアップをしてから就活に取り組みたい場合は就労移行支援サービスを利用すると良いでしょう。
就労移行支援 よくある質問
就労移行支援の選び方


就労移行支援事業所選びに失敗したと感じている利用者の声で多く聞かれるのが「事業所の雰囲気が自分には合わなかった」「自分の受けたいプログラムがなかった」「障害の特性を考慮してくれなかった」といったものです。
就労移行支援事業所は、自主的な活動を中心とした所から、障害の特性に合わせた個別サポートを強化している所まで様々。事業所選びに失敗しないためには、「自分の通える範囲にどんな事業所があるのか」をしっかりと調べることが重要なのです。
就労移行支援は原則2年しか利用できないサービスなので、事業所選びに失敗したくはありませんよね。
資料請求や、見学を行って事業所を比較するところからはじめてみましょう。


2分で資料請求完了です
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精神保健福祉手帳を持つデメリットについて
精神保健福祉手帳を持つことで、日常生活にデメリットが出ることはありません。
障害者雇用で勤めない場合、障害を企業に申告する義務はなく、もし発覚した場合も障害を理由に解雇されることは、差別であるとして禁止されているのでご安心ください。
むしろ、日常生活に関わる様々な割引やサービスを活用することができるので、経済面でメリットを感じることができる場合が多くなるでしょう。
もし、精神保健福祉手帳を持つことに心理的負担を感じる場合があり、精神保健福祉手帳を手離したい場合は手帳の返還を行うことができます。
また、精神保健福祉手帳は2年毎に更新手続きが必要になりますので、精神保健福祉手帳を手離したい 場合は更新手続きを行わないという選択肢を持つことができます。



僕は障害者手帳を取得することで障害者雇用で大手企業で配慮を受けながら仕事をすることが出来ています。


障害者手帳の申請方法
最後に申請方法を解説します。
手帳の申請用紙は市区町村の役所(障害福祉課)で手に入るので役所へ行きましょう。申請用紙を入手したら、主治医に申請用紙の記入と診断書を依頼するのが申請の流れです。



申請の流れと必要書類をわかりやすく説明しますね。
申請の流れ
申請する際には以下の手続きが必要になります。
・医師の診断書(精神障害と診断された日から6か月以上経過したもの)
・障害年金を受けている場合の障害年金証書、年金裁定通知書、直近の振込(支払)通知書いずれかの写し及び同意書
・特別障害給付金受給資格者証、直近の国庫金振込通知書いずれかの写し及び同意書
申請窓口は生活している市区町村の精神保健福祉に関する窓口になります。
申請から手帳交付決定まではおおよそ1ヶ月かかります。
申請して落ちたらどうしたらいい?



残念ながら、障害者手帳は申請すれば必ず取得できるというものではありません。
しかし、先ほども書いたように、精神疾患による障害が一定期間以上継続した状態にある方が、日常生活に支障が出ている場合には交付されるので安心してください。
ただ、日常生活に支障が出ていることをうまく伝えられずに申請が通らないこともあるのは確かです。
その場合はこちらの記事に再申請する際のポイントを書いているのでぜひ参考にしてくださいね。
- あわせて読みたい記事
- 精神障害者手帳3級に落ちた人へ。再申請するために必要な情報と準備のポイント
まとめ
精神保健福祉手帳は3級相当でも活用できるメリットが多くあります。
特に、精神保健福祉手帳を所持することで経済面における負担の軽減につながる可能性を期待することができます。
精神的なしんどさで心療内科や精神科で治療を続けている場合は精神保健福祉手帳の申請について検討することも考えても良いのではないでしょうか。
精神保健福祉手帳を申請する条件に当てはまる場合は、ご自身が生活している市町村で申請手続きを行ないましょう。